『空飛ぶ広報室』 有川 浩

このテーマというか企画を売り込んだ人がいるということと
何よりこれだけの物語にしてしまう有川さんが素晴らしいです。
単なる小説としてもいいですが、色んな読み方・感じ方がある一冊です。

「自衛隊」という存在に対して抱くイメージは人それぞれ。
「軍隊」というイメージを持つ人もいるだろうし、
「災害救助」というイメージが強い人もいるでしょう。
なかには「違憲」だの「軍国主義」だのって吠えて
「親の敵」みたいなこと言っている方々もいますが・・・

ボク個人のイメージは・・・「感謝すべき存在」ですね。
「国防」と「災害救助」という2つの大きなミッションというか
どれも国土・国民を守るということにつながるわけです。
ボクは親族に陸上自衛官だった人がいるので
特に意識することは無く、普通の「職業」という感覚もあります。
だからこそ「仕事をしただけで批判される」ってのは
理不尽極まりないなと感じています。

で、この「空飛ぶ広報室」という作品の舞台というか
主人公たちは航空自衛隊の広報室という
日常的に批判の矢面に立たされたり、
何かと間違ったイメージをもたれがちな自衛隊の
正しい姿を伝えていくことを仕事としている人たちです。

「広報」という仕事

ボクも会社で企画部にいたときに広報アシスタントみたいな
役割を担っていたことがあります。
といっても会社案内を作ったり、HPを更新したりという
直接、フロントに立ってアピールするものではなく
あくまで必要最低限というところでした。
(メインの担当者がちゃんといたからそれで済んでいました)

読んでいると随所に出てくる自衛隊の広報の仕事がでてきます。
なるほどな、という感想を持つところもあれば
理解してもらうことの難しさを感じさせられる部分もあって
勉強になる反面、誤ったイメージを持っている人を減らすためには
やっぱりちゃんとした教育が必要なのでは?と感じました。

ただ「広報」ってすごく大事なんだけど
その努力を良くも悪くも一気に変えてしまうのは現場の仕事ぶり。
そうして考えるのであれば、震災以降の自衛隊へのイメージは
やっぱりすごくポジティブというか信頼に満ちていると
ボクは感じていますし、そうであってほしいと思います。

「あの日の松島」

お読みになった方はわかると思いますが
本書はかなりの厚さ(462ページ)もありまして
持ち歩くには結構なサイズと重さです。
なんでこんなになったのかと読んでみると
ある章が追加になったからだという話がでてきます。

「あの日の松島」

2011年3月11日の松島基地の話。
本来は昨年出版されているはずだった本書が
今年出版されている理由は有川さんが
震災以後の松島基地を取材してストーリーを追加したからとのこと。

読んでもらえばわかりますが、
あのとき最前線で救助と支援にあたっていた松島基地の方々も
実は被災者であるということ。
津波に基地が襲われ、航空機も被害にあって
本来ならとても救助にあたる余裕はなかったのかもしれません。
でも、彼らは自分達の使命に忠実に従ったわけで
その過酷さは想像を絶するものがあったと思います。
この章によってこの作品が一段、別のステージに至ったはずです。

夢、そして挫折

主人公、そしてヒロインがそれぞれ夢を抱き、挫折しているのが
この作品の一番下に流れているものの1つです。
実現寸前だった夢、実現していた夢がさまざまな理由で
自分ではどうすることもできないかたちで失われてしまう・・・
挫折という表現が適切かはわかりませんが、ボクはそう感じました。

ボクもこの10年、仕事をしてきた中で
抱いていた夢だったり目標を失ったり、挫折したことがあります。
きっと多くの人がそういう経験をしてきていると思います。
すぐにその状況を受けとめて切り替えられる人もひるのでしょうが
ボクはそれが上手くできない人間です。

第一歩がようやく実現し、これからだと思っていたら異動になったり
ようやくかたちになってきた仕事を会社の判断で止めざるを得なかったり
その度に挫折というか悔しい思いとやり場のない気持ちを抱きました。
そんな感じですから切り替えもサクッとはいかず
ズルズルと気持ちを引きずることが当たり前でした。

突っ張る必要は無い、でも突っ張ることも必要

なんだかとても矛盾した表現ですが
そんなときにボクがやってきたことです。
もう凹むなら凹めばいいんだと思います。
無理して平静を装うよりも、一度自分の気持ちを受け入れないと
切り替えるのはとても無理なのではと。
ただ、周囲にはそれを見せないようにしています。
もちろんきっと気付かれているとは思いますが・・・

いつ切り替えるか、切り替えられるか

物語の中では何度もこういうシーンがでてきます。
自分で切り替えるのか、他人のアクションによって切り替えるのか、
それとも時間のなかで切り替わっていくのか。

どう読むか、どう考えるかで感じ方が大きく変わる作品だと思います。
ボクは登場人物の誰かに自分を重ねて読んでみることをオススメします。

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この記事へのコメント

シカカイ
2012年09月09日 21:09
(抜粋)
もう凹むなら凹めばいいんだと思います。
無理して平静を装うよりも、一度自分の気持ちを受け入れないと
切り替えるのはとても無理なのではと。


私は
小さい頃からごく最近まで
人を変えることはできないけど自分に関してはどうにでもなる!私に関しては万能だ
と気おって、挫折でも事故でもどんな状況でもポジティブを装ってきました
底で沸き上がっている
苦しさや怒りは
私のなりたい私には似合わない、と目をそらしてきました
そんな負の感情に構わずとも、時間が風化させ、そのうち消えると考えていたんです
でも……………
そうじゃなかったんです
一度認識した感情を見ないフリで消滅させることはできないんですよね
背けてきたぶんの蓄積の爆発を最近うけて、向き合って
ようやく切り替える
ことができたばかりで
…著者さんの文がタイムリーで胸にしみました

自衛隊。
私は水害にあって救助を受けた過去があり
この三文字を目にする都度
当時、身をもって感じた有り難さがよみがえります(o^∀^o)
私にあっては風化しない感情の素敵な部分です

リクエスト?督促?(^w^)
に応えていただき、持ち歩くには結構なサイズと重さを通勤時所持しあのハード期に読破いただきましたこと感謝申し上げます
著者
2012年09月11日 00:45
シカカイさん
コメントありがとうございます。
リクエストがいいきっかけになりましたので書いてみました。

ボクの場合、凹んだときは相当にネガティブです。恨み辛み妬み嫉みまで全部吐き出して、それでもまだ足りぬくらいの状態になったこともあります。
もっともそれくらいしないと浮上しないので仕方ないのですが、こればかりは切り替えるためのプロセスとして受け入れています。
シカカイ
2012年09月12日 00:10

著者さんはポジティブですね
最終的にそれで浮上すると
把握した上での行動なのでしょう?
そして事実、浮上するのでしょう
自分を客観視も、経験則を見いだすこともなしに
ただただ吐き散らして
ますます沈み込んで
しまいに享楽やら暴力にどっぷり浸かって
なお苦しんでる人を
何人か知っている私が著者さんの日常をブログから伺うかぎり
この人はポジティブだなぁ
と、しょっちゅう思っていますo(^-^)o
(別にネガが悪、ポジ崇拝!とかそんなんじゃないです)

などと、私の勝手な思いを言わせて頂きました…著者さんと論争?しても叩きのめされるので(笑)、コメント返しはどうかなさらないでくださいm(_ _)m

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